その日、仮の自宅に帰って妹のミグに聞いてみたところ、どうやら今トマはこの町に来ていたらしい。
ザザはそれを聞いて、正直な話、あまり合いたくないなあと思ってしまった。
実はトマが旅立ってから、一度も連絡を取り合っていない。
手紙なんて書けるはずがなかった。
あんな・・・まるで追い出すような・・・。
トマが旅に出ようとしていることを知ったのは、その日のたった三日前だった。
ザザとトマ、ミグの三人は幼いときからの友達で、どんな些細なことでも打ち明けた。隠し事なんて無かったはずだから、ザザはとても驚いた。
いつか三人でパーティーを組んで冒険に出ることは三人の夢だった。
唯の夢だった。
・・・はずなのに。
トマが一人だけで夢を叶えようとしているように見えた。
彼の旅立ちを、ミグのように素直に喜べなかった。
ザザはトマが旅立つその日まで、全く口をきかなかった。
当日の夕暮れ。
去っていくトマの背中に向かって怒鳴ったのは。
「二度と戻ってくるな。お前の顔なんか見たくない。」
その言葉がそれまでの全てをぶっ壊した。
驚いたトマの顔。とがめるミグの声。
頭の中が白っぽくなって曖昧にしか覚えていない。
俺は取り返しの付かないことを言ったのだ。
それ以来ミグはザザに対してどこかしら冷たい。
俺は本当に駄目な兄で、駄目な友達だ。
後悔している。本当に。