「僕の名前はシュナーベル。一週間前この町に来たんだけど、あのピエロに興味を持ってね。」
そういうとシュナーベルは、「素敵だ・・・」と一人悦に入った。
ついていけない。
この変な男は、ザザと同様にあのピエロのことを調べているらしく、ザザが書きかけのレポートを持っているのを見て声をかけてきたのだ。
シュナーベルはザザのように現場まで行っておらず、そのぶん人に話を聞きまくっていたらしい。
どれだけ迷惑だったことか。
他人ん家でシュナーベルワールド全開。ザザには容易に想像できた。
シュナーベルはいま、ザザがまとめた未熟なレポートを楽しそうに眺めている。
未熟、とはいっても、日付や時刻、場所、相手の行動などは詳細に書かれているモノである。そこそこ、参考にはなるのには違いない。
「で、あんたは何を調べたわけ?インタビューしまくったんだろう?」
「よくぞ聞いてくれたっ!!」
(ビクッ)
普通の質問をしたつもりが、予想以上にテンションを上げてしまったようだ。
あちゃー、シュナーベルワールド・・・・
「そもそも僕がこの事件に興味を持ったのは、五十年前のある都市伝説がもとなんだ。」
あんたそんなもんが無くても興味持っただろうが、と言うつっこみはさておき。
「都市伝説?」
初耳だ。
「その都市伝説というのが・・・」
「あの、レポート返して、まとめるから・・・」
「ああ、ごめん。それで、都市伝説だけど・・・・」
―――これは五十年前に子供の間ではやったうわさ話なんだけどね、この町にある公園にジャングルジムのてっぺんでお願い事をすると、青い服を着たピエロが現れて願い事を叶えてくれる、と言う話なんだ。怪談とかと違うのは、願い事をするときに人に見られてもいいことなんだ。むしろ、三人以上でお願いしないとかなえてくれないって。
―――面白い話だろ。ところが、五十年前、その都市伝説ははやった年の内に語られなくなってしまったらしい。何故なのかは誰も答えてはくれなかった。
―――そして五十年経ったいま、その青いピエロが姿を現した。
「まあそんなところかな、僕が調べたのは」
「ふーん・・・」
ザザがレポート用紙の最後の行にペンを走らせたとき。
ぐるるるるるるるる・・・
シュナーベルの腹の虫が鳴いた。
「奢ってくれるっていうのかい?嬉しいなぁ」
「誰が奢るかぁッ!!」
ばしこ!!!
ザザの手刀がシュナーベルの眉間に命中した。
シュナーベルが目をなわしている好きにザザは姿を消した。
こいつとはできるだけ関わらないようにしよう。