実は、ザザが今いるここは、キタの町ではない。
コパールに近いトイールという町で、キタの町よりも活気がある。
ザザがそこにいるのは、「初歩の剣術講習会」とやらを受けるためだ。
ザザが謎の人物を見かけた次の日。
自分の時間となる午後の四時以降。
ザザは特に意味もなく商店街をうろついていた。
人混みの中に居すぎたせいで、ザザは少々疲れてしまった。
カレが少し立ち止まった、その時である。
見覚えのある人物が、近くを通り抜けた。
・・・気がした。
振り返ると、
見覚えのある、後ろ姿。
墨色の髪。オリーブグリーンの帽子。
背の高さだけから判断すると、ザザと同じ年頃の少年のようである。
ザザの頭の中に、一年ほど前に生まれた町を旅立った友人の名前が浮かんだ。
(トマ・・・?)
声をかけようとして、やめた。
後ろ姿だけでは何とも判断が付きにくい。
もし全然違う人だったら恥ずかしいし。
だがそれ以前に、
かけられる言葉が、思いつかなかった。
______to be continued______