第○章:ベンチ
ふぅ━━━━…。
オレはすとんと腰を降ろした。
『今年の夏ももぅ終わりかぁ…』何気なくオレは呟いた。
『お待たせっ!』お手洗いに行っていたククリがそう言ってからククリもふぃ━━━━…と腰を降ろす。
しばらくの間沈黙があたりを包み込んだ。聞こえて来るのは、気の早い秋の虫たちの演奏だけだ。
『夏ももぅすぐ終わっちゃうね…』
『うん…』
『…またお祭り一緒に行こうねっ』
『う、うん…』
少し照れくさい。
再び沈黙が二人を支配する。
その沈黙を割いたのは、どこからか聞こえた誰かのでかいクシャミだった。
ったく誰だよ…。
自然とオレとククリは顔を見あわせて、プッと吹き出した。
『勇者様、今日なんで遅れてきたの?』
『えっ…それは…』
とても本当の事は言えない…。
『ククリ、少しコワかったんだよ?…勇者様が来ないんじゃないかって…』
『ご、ごめん』
『べぇ━━、許さないもぉ━━ん』
いたずらっ子っぽくククリが言った。
『ククリの心の傷はとても深いのだぁ━━』
『ど、どうしたら許してくれるんだよ?』
『ん━━━━…』
ククリは少しの間考えて、
『じゃぁ、一つククリのお願い聞いてくれたら許してあげるっ』
『な、何でもするから!』
オレの返答にククリはまさにいたずらっ子そのものに微笑んで、そしてオレの耳元で小さく言った。
『━━━━っ!?』
それを聞いた瞬間オレは思わず立ち上がってしまった。
『…どうしたの?何でもするって言ったよ?』
『そそそそうだけど…』
オレは戸惑った。とてつもなく戸惑った。
『はやくぅ━━━』
『ククリ…酔ってる…のか?』
目をつぶって待っているククリに、オレは頬が熱くなるのを感じた。気付けば、月はオレの真上を通り過ぎ、少し傾いていた。
秋も近い夏のちょっぴり甘酸っぱい日━━━━
━━━━━━勇者と魔法使いのそんな一日。
ちなみに、ふたりがやりとりをしている中、人形が妙な顔をしたのはまた別の話。
いやぁもぅスルーしてくれて結構です。自己満足ですからw
ぇと、前回レスくださったエリーs、無無明s、あいりs、miyas、えみちsありがとうございましたw